今回のニューヨーク出張は現地到着が日曜日の午前中でしたので、午後、観光をする時間がありました。今まで行ってみたいと思っていながら、チャンスのなかったメトロポリタン美術館を訪問しました。
限られた時間の中、効率的に回り、目的の作品はすべて見ることができましたので、今回の記事では、名作を見逃さないためのメトロポリタン美術館ガイドをお届けします。
- メトロポリタン美術館について
- 見どころ
- まとめ
メトロポリタン美術館について
概要
正式名称はThe Metropolitan Museum of Art、通称Met(メット)と呼ばれ世界中の人々から愛されています。300万点以上のコレクションを保有し、世界三大美術館の一つとしてルーブル美術館とともに必ず名前があがります。
ロケーションとアクセス
ロケーション
5番街に面するセントラルパークの東端に位置しています。
美術館の建物自体は80丁目から84丁目にかけて建てられていますが、正面玄関は82丁目付近に位置しています。
アクセス
アクセスはバスでも可能ですが、旅行者には難易度が高いので、地下鉄でのアクセスをご紹介します。
最寄り駅は「86th street」です。4,5,6,Q番線が停車します。
86th Street駅からは徒歩10分ほどの距離です。
入場料と営業時間
入場料
- 大人=$25
- シニア(65才~)=$17
- 学生=$12
- 子供(12才未満)=無料
チケットは3日間有効です。下記の写真の赤枠部分がシールになっていますので、それを目立つ場所に貼って入場します。
営業時間
- 日~木=10:00~17:30
- 金・土=10:00~21:00
*休館日=サンクスギビングデー、12/25、1/1、5月の第1月曜日
その他の詳細はメトロポリタン美術館公式WEBサイトをご覧ください。
見どころ
メトロポリタン美術館は300万点以上の作品を所蔵しており、全部見ようと思えば、1日ではとても足りません。そこで代表的な作品を見逃さないための美術館の回り方をご紹介します。
メトロポリタン美術館の構造
メトロポリタン美術館の展示室は、地階(Ground Floor)と1階(中2階含む)、2,3階に分かれています。
地階で作品が展示されているスペースはわずかで、ほとんどの作品は1階と2階に展示されています。部屋ごとに番号が振られていますので、地図があれば効率的に回ることができます。
地図は日本語版もあり、チケットを購入するカウンターやインフォメーションカウンターで入手可能です。
また、公式アプリにも地図があり、主要作品に関しては日本語の音声ガイドもありますので、おすすめです。
デンドゥール神殿(The Temple of Dendur)
古代エジプト 紀元前1世紀頃
1階Gallery131
まずは入場後そのまま右端に展示されているメトロポリタン美術館の目玉のひとつ「デンドゥール神殿」に向かいます。
デンドゥール神殿は紀元前15年頃にエジプトを占領した初代ローマ皇帝アウグストゥスによって建てられたもので、もともとナイル川のほとりに建っていました。
1960年のエジプト政府によるアスワン・ハイ・ダムの建設により、アブ・シンベル神殿が水没の危機にさらされることになり、アメリカが遺跡を救うために1200万ドルの資金を援助して、そのお礼にエジプト政府はデンドゥール神殿をアメリカに送りました。
余談ですが、このアブ・シンベル神殿の保護が世界遺産ができるきっかけになっています。
Robert Lehman Collection
続いて中央奥のRobert Lehman Collectionを目指します。途中、中世の美術品などを見ることができます。
アングル/ド・ブロイ公爵夫人(Portrait of Princess Albert de Broglie)
1階Gallery957
1853年
アングルの「ド・ブロイ公爵夫人」はRobert Lehman Collectionの真ん中よりやや左のGallery957に展示されています。
アングルはフランスの新古典主義の巨匠。肌の艶やかさや布の質感がすごいです。
モネ/サンタドレスの庭園(Garden at Sainte-Adresse)
1866–67年
グランドフロアGallery964
ここで一旦地下のグランドフロアに降ります。Robert Lehman Collectionは1階と地下の2フロア構成です。
お目当てはモネの「サンタドレスの庭園」。
この作品は、印象派の代表であるモネの、印象派以前に描かれた代表作です。
グランドフロアにはこの作品以外にも多くのモネの作品が展示されています。
Modern and Contemporary Art
グランドフロアから1階に戻り、次に目指すのはピカソの作品が多く飾られているModern and Contemporary Artのコーナーです。途中ヨーローパの彫刻のコーナーを通り抜けます。
ピカソ/夢見る人(The Dreamer)
1932年
1階Gallery901
ピカソの 「夢見る人」は、Modern and Contemporary Artの左側のGallery901にあります。
「夢見る人」はシュルレアリスム(超現実主義)の時代の作品であり、愛人であるマリー・テレーズが寝ている姿を曲線と鮮やかな色調で描いています。
19th- and Early 20th-Century European Paintings and Sculpture
ピカソを堪能した後は、そのまま2階に上がり、19th- and Early 20th-Century European Paintings and Sculptureを目指します。多くの方にとってこのコーナーがもっとも馴染みのある画家の作品が多いのではないでしょうか。
シスレー/ガレンヌ村の橋(The Bridge at Villeneuve-la-Garenne)
1839年
2階Gallery824
まずはコーナー中央やや右寄りにあるGallery824を目指します。
フランス生まれのイギリス人シスレーはもっとも典型的な印象派の画家だと言われています。この作品にも印象派のスタイルを生涯貫き通したシスレーの特徴がよく表れています。
ルノワール/ジョルジュ・シャルパンティエ夫人と子供たち(Madame Georges Charpentier and Her Children)
1839年
2階Gallery824
同じ部屋にはフランス印象派の巨匠ルノワールの作品も多く展示されています。
「ジョルジュ・シャルパンティエ夫人と子供たち」はルノワールが手がけた代表的な肖像画作品のひとつで、1879年のサロン(官展)の入選作でもあるります。
依頼主のシャルパンティエは有名な出版事業者で、後にルノワールの有力な支援者となりました。
スーラ/サーカスの客寄せ(Circus Sideshow (Parade de cirque))
1887–88年
2階Gallery825
Gallery824の奥にはGallery825 がありますが、こちらの部屋も見どころが一杯です。
まずは新印象主義を代表する画家スーラ晩年期の傑作「サーカスの客寄せ」です。
「サーカスの客引せ」は、スーラが初めて人気のある娯楽を題材にした重要な作品です。
ゴッホ/糸杉(Cypresses)
1889年
2階Gallery825
同じGallery835にはポスト印象派を代表するゴッホの作品も数多く展示されています。
「糸杉」はゴッホの死の1年前に描かれた傑作です。写真では分かりづらいかもしれませんが、力強く浮き上るほど塗られた絵の具が印象的でした。
ゴーギャン/二人のタヒチの女(Two Tahitian Women)
1889年
2階Gallery825
同じ部屋には一時ゴッホと共同生活をしていたゴーギャンの作品もあります。
「二人のタヒチの女」を制作した当時、ゴーギャンはタヒチの原住民女性の穏やかな性格と美しさに魅了されていました。
モデルの二人の女性はゴーギャンの他の作品でも描かれています。
ターナー/ヴェネツィアの大運河(Venice, from the Porch of Madonna della Salute)
1850年
2階Gallery808
19th- and Early 20th-Century European Paintings and Sculptureの最後は、イギリスロマン主義の巨匠ターナーの「ヴェネツィアの大運河」です。
ヴェネツィアの大運河はターナーの代表的な風景画作品の一つで、イタリア旅行でヴェネツィアを訪れた際の、サン・マルコ広場近くの大運河における情景を描いています。
European Paintings, 1250-1800
19th- and Early 20th-Century European Paintings and Sculptureを後にし、個人的には一番楽しみにしていたEuropean Paintings, 1250-1800にむかいます。
エル・グレコ/トレドの風景(View of Toledo)
1597年
2階Gallery607
まずはコーナー中央奥にあるエル・グレコの「トレドの風景」です。
エル・グレコは「自然を凌駕する行動の芸術的手法」という意味マニエリスム後期の巨匠として知られています。エル・グレコの現存する風景画は2点しかなく、「トレドの風景」はそのうちの1点です。
色使い、タッチが独特で今回見た中でも特にお気に入りの1点です。
ルーベンス/ルーベンスの妻エレーヌ・フールマンと息子ピーテル・パウル(His Wife Helena Fourment and One of Their Children)
1635年
2階Gallery628
次なるお目当ては隣のGallery628に飾られているルーベンスの「ルーベンスの妻エレーヌ・フールマンと息子ピーテル・パウル」です。
モデルになっているエレーヌ・フールマンはルーベンスの二度目の妻で、再婚時、ルーベンスが53歳であるのに対して、彼女は16歳でした。
この部屋には他にもルーベンスの作品が多く展示されています。
フェルメール/水差しを持つ女(Young Woman with a Water Pitcher)
2階Gallery630
1662–63年頃
バロック期を代表する画家であるフェルメールの「水差しを持つ女」はルーベンスの作品が展示されている隣りの部屋に飾られています。
フェルメールの作品は、映像のような写実的な手法と綿密な空間構成そして光による巧みな質感表現を特徴としており、「水差しを持つ女」にはその特徴がよく現れています。
ラ・トゥール/女占い師(The Fortune Teller)
1632–35年頃
2階Gallery634
次にフランス古典主義を代表シュル巨匠ラ・トゥールの「女占い師」が展示されているGallery634にむかいます。
老婆が若い男性を占っていますが、周りのジプシーの女性達が男性の持ち物を窃盗しようとしています。
ヴェチェッリオ/ヴィーナスとリュート弾き(Venus and the Lute Player)
1560年
2階Gallery638
European Paintings, 1250-1800コーナーの最後は、ヴェチェッリオの「ヴィーナスとリュート弾き」です。
ヴェチェッリオはベネチア派の最も重要な画家の一人です。
横たわる裸体の女神はヴェチェッリオが繰り返し描いたモチーフだそうです。
The American Wing
最後に向かうのは、2階最奥にあるThe American Wingです。
チャーチ/アンデスの中心(Heart of the Andes)
1859年
2階Gallery760
チャーチは、自然を丹念に調査し、ナイアガラやアンデスなどの壮大でドラマティックな光景を忠実にありのままの姿で大画面に再現し、自分と同じ体験を見る人に味わってもらおうとしたそうです。
サージェント/マダムXの肖像(Madame X (Madame Pierre Gautreau))
1884年
2階Gallery771
チャーチの展示されている直ぐ側の部屋にサージェントの「マダムXの肖像」は展示されています。
サージェントは伝統的な肖像画を描き続け「最後の肖像画家」と呼ばれた画家ですが、このマダムX肖像は、あまりにも官能的であり品がないとして非難されスキャンダルに発展しました。
エイキンズ/考える人(The Thinker: Portrait of Louis N. Kenton)
2階Gallery771
1900年
マダムX の肖像と同じ部屋にエイキンズの「考える人」は展示されています。
エイキンズは実写主義の画家であり、アメリカ近代美術の父と言われることもあります。
まとめ
メトロポリタン美術館はとにかく広大で多くの作品が展示されていますので、見たい作品をあらかじめ決めてから訪問するのが良いと思います。
特に2階の 19th- and Early 20th-Century European Paintings and SculptureとEuropean Paintings, 1250-1800には有名作品が目白押しです。
今回ご紹介したルートは実際に私が有名作品をおさえつつ、約3時間で回ったルートです。
この記事が、メトロポリタン美術館への訪問を考えている方に少しでもお役立ちいただけると幸いです。